vol.218 今昔物語「ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~」編

 ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~・・・2017年 配給 東宝  制作幹事 テレビ朝日
 監督 滝田洋二郎  脚本 林民夫  原作 田中経一  製作 亀山慶二 藤島ジュリーK.  音楽 菅野祐悟  製作総指揮 早河洋
 キャスト 二宮和也 西島秀俊 綾野剛 伊川東吾 笈田ヨシ 竹野内豊 宮崎あおい



 今回は”シリーズ レシピ”を締めくくるにふさわしい、テレビドラマと映画のご紹介!(”シリーズ レシピ”って・・・いつからの話・・・?)

 近代史は好きなのですが、遠い昔の学校でも、古代から授業を始めると、近代・現代は3学期の終わり当たり・・・
 足早にスキップしてしまうので、どうしても幕末位で興味の範囲を超えてしまいます。

 今回のご紹介は、どちらもその魅惑的な”近代史”と、同じく魅惑的な”料理”を交えた、人間模様・人間の成長のお話です。

 ・天皇の料理番(2015) TBS系列 日曜21:00 最高視聴率17.7%
 演出 平川雄一朗 岡本伸吾 中前勇児 山室大輔   原作 杉森久英「天皇の料理番」  主題歌 エドワード・エルガー「威風堂々」 さだまさし「夢見る人」  脚本 森下佳子  プロデューサー 石丸彰彦
 キャスト  佐藤健 黒木華 桐谷健太 鈴木亮平 伊藤英明 杉本哲太 小林薫
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 2015年春ドラマと、かなり前ではありますが・・・
 自分の中では、かなり思い入れのある作品です。

 原作は”杉森久英”による、15万部のベストセラー同名小説。
 モデルとなったのは、宮内省大膳職司厨長(料理長)を務めた”秋山徳蔵”
 昭和天皇に48年もの間、仕えた人物です。
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 遡る事、35年以上前。
 1980年(昭和55年)の秋から放映していた”堺正章”主演の同名ドラマがありましたが、今回はそのリメイク。
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 当時、中学生になるかならないか位でしたが、熱心に見ていた覚えがあります。

 要所要所に、関東大震災や太平洋戦争の映像が挟まれ、ドキュメンタリータッチさが、ドラマを盛り立てていました。

 そして、今や大御所”明石家さんま”も、その当時・・・
 ドラマ初レギュラーとして、全国的に知名度を上げて、東京進出の第一歩となったドラマです(当初は3話程でクランクアップの予定が、スタッフに気に入られ、もう一つのエピソード軸として、最後まで登場したそうです)

 さて2015年版では!
 主演の”佐藤健”は、自分の中では、当時「るろうに剣心」の出来が良く、そのイメージを払しょくできるか?と思っていましたが・・・
 バタ臭さはあるものの、主人公の青年期から「天皇の料理番」を全うするまでを、見事に演じ切りました。

 料理とは無縁だった”佐藤健”でしたが”服部栄養専門学校”の西洋料理主席教授の授業を毎日受け、異例の代役無しで、料理の撮影を行ったそうです。
 (”堺正章”も”ホテルオークラ東京”の厨房で約3か月間、料理の修業をして臨んでいます)
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 主役の”篤蔵”の奥さん役の”黒木華”も、最高に良かったです。
 (今回初めて知りましたが・・・名前の読みが ”クロキ ハナ”ではなく ”クロキ ハル” だそうです)
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 弱そうに見えて強い女性。
 一歩引きながらも、寄り添いながら後押ししていく女性。
 やりたいようにさせていながら、手綱をしっかり引いている女性。

 そんな古き良き日の奥さん役を、素直に静かにこなしていました。
 
 ”2016年春ドラ編”で、自分1位を付けた「重版出来!」で、初主演で素晴らしい演技を見せてくれましたが、この「天皇の料理番」のポイントが加算されていたかもしれません。

 ”TBS 60周年記念番組”として企画されているので、周りを固めるキャストも豪華。
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 ”佐藤健”演じる”篤蔵”の師匠であり父代わりでもある、華族会館の理長”宇佐美”役の”小林薫”
 ”篤蔵”の兄”周太郎”の指導教授であり、華族会館の法律顧問でもある”桐塚”役の”武田鉄矢”
 21年ぶりのドラマ出演を果たした”フランス大使”役の”郷ひろみ”
 他にも”杉本哲太” ”和久井映見” ”伊藤英明” ”加藤雅也” ”佐藤蛾次郎”等々・・・

 その中で!
 このドラマ一番の印象を残したのは!
 兄”周太郎”役の”鈴木亮平”が、素晴らしかった!
 (実はこの人の事を書きたかった!)

 現在、NHKの大河ドラマ「西郷どん」の主役”西郷隆盛”役に大抜擢されていますが・・・
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 「俺物語!」(2015年)でも、スペシャルドラマ「銭形警部」(2017年)でも、再現率の高さ、役作りの徹底さが見えてきます。

 その”鈴木亮平”は、今回の「天皇の料理番」で演じた役は・・・

 ”篤蔵”の兄役で、”篤蔵”と違い優秀だが病に倒れてしまう役。
 出来が悪い”篤蔵”が、夢に向かって進んでいくのを、自分の事の様に喜び応援する、頼れる存在。
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 この人、誰?

 これは本当に”鈴木亮平”なのか?

 当時見ていた時は、本当に病人なのでは?
 と、かなり心配して見ていました。

 ”デ・ニーロ・アプローチ”と言う言葉をご存知ですか?

 ハリウッド俳優の”ロバート・デ・ニーロ”が由縁ですが・・・

 「ゴッドファーザーPARTⅡ」(1974年)では、イタリア語をマスターした上で”シチリア訛り”を再現する為にシチリア島へ住んだ。
 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984年)では、ユダヤ人家庭にホームステイ。
 「レナードの朝」(1990年)では、数か月の間の入院生活。
 最近でも「Being Flynn」(2012年)では、変装してホームレス施設へ潜入する。
 等々・・・

 その役に徹するために、過度な役作りをする事を”デ・ニーロ・アプローチ”と呼ばれるようになりました。

 その最たるものが!
 「レイジング・ブル」(1980年)において、プロボクサー役として肉体改造をしてボクサー体形で臨み、引退後の役では25㎏以上の体重増量をしました。

 今回の”鈴木亮平”は・・・
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 元々の体重は”75㎏”
 今回の”周太郎”役では”57㎏”
 俺物語では!”86㎏”
 正式な物では無いですが「西郷どん」では”90㎏”は言うに超えているらしい。

 人間ってこんなに・・・
 20㎏も30㎏も、変幻自在に体重を増減させられるものなのか?

 ストイックな”亮平アプローチ”で、物語が数段盛り上がりました。
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 体脂肪8%で臨んだ「HK 変態仮面」(2013年)や「TOKYO TRIBE」(2014年)等・・・
 色物・ワイルドも”アプローチ”してましたが・・・

 そんな、みんなの全力が伝わった、会心のドラマでした。


 さて、もう一つのお話。

 とくし丸で”レシピ大賞”(vol.211 とくし丸”レシピ大賞” 参照)をやっていた頃(もう思い出の域だな)たまたま名前につられて”TSUTAYA”で借りた映画です。

 ・ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~
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 どうせ”天皇の料理番”等の2番煎じでしょ。
 位にしか思っていませんでしたが・・・

 これが実に面白いストーリーでした。

 監督は「おくりびと」(2008年)の”滝田洋二郎”
 脚本は「永遠の0」(2013年)の”林民夫”
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 企画は”秋元康”
 原作は”フジテレビ”の料理バラエティ番組「料理の鉄人」(1993~1999年)の演出家”田中経一”のデビュー小説。
 調理指導と絢爛豪華なメニューの映像化には、料理界の重鎮”服部幸應”

 面白くない訳がない!
 
 主演は”嵐”の”二宮和也”
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 TBSの”2018年春ドラ”(ブログアップされるのか?されないのか?)
 「ブラックペアン」で、主演を務めましたが、まさしくそのキャラクターそのまま・・・ちょっと気になりましたが・・・一度食べた味を完全再現できる絶対味覚(麒麟の舌)を持つ料理人を演じました。

 ただこの映画の本当の主役は・・・
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 ”西島秀俊”
 「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(2017年春ドラ 参照)でも、アクションありの寡黙な役を演じていましたが・・・
 優しさと存在感がある、好きな役者さんです。

 ”二宮和也”同様”麒麟の舌”を持つ料理人で、1930年代に”満州国”に天皇の料理番をしていた彼が考案した112品による幻のフルコース。

 「大日本帝国食菜全席」

 それにかける”情熱”と、それに”希望”を託した人物を、好演しました。

 その他にも”宮崎あおい”や”綾野剛” ”竹野内豊”らが共演しています。
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 その中で注目したい人は・・・

 ”兼松若人”
 中国人の”楊晴明”役をした人です(最初中国の俳優さんかと思いました)
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 監督の”滝田洋二郎”いわく、
 「オーディションから参加してくれた兼松君という方と、新しい出会いがありました。素敵な表情をする役者さんです」
 と、ごり押し大絶賛のまだ無名の役者さんです。

 ”井筒和幸”監督の「パッチギ!LOVE&PEACE」(2007年)や”園子温”監督の「新宿スワンⅡ」(2017年)等々・・・
 数々の”Vシネ”で超脇役で出演していましたが、おもにチンピラ・不良・ヤクザと、そっち系の役柄が多かったです。

 新しい役柄を、きっちり存在感を出して、演じてくれました。
 これからに注目です!

 もう一人。
 ”笈田ヨシ"
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 現在はパリ在住で、アメリカ・ヨーロッパで、俳優や演出家として、まさに世界を舞台にして活動している。
 主に外国で有名で、2013年には”フランス芸術文化勲章”の最高位”コマンドゥール”をフランス政府から授かっているほど。
 最近では、日本で初めてオペラ演出を手掛けた、2017年「プッチーニ/歌劇”蝶々夫人”」等を成功させている。

 「この映画は料理の話ですので、映画を料理に例え申しますと、監督が料理人で、俳優はその食材だと思っております。食材が悪ければ、名料理人がいくら頑張っても美味しい料理は作れません。
 ですから私も良い食材の一かけらで居られるように努力するつもりです。大した食材では有りませんが、83年かけて作った”古漬け”の味を楽しんで頂ける事を願っております」

 渋い!渋すぎる!
 よく存じない人でしたが、映画のワンシーンを重厚なものにしてくれました。

 さて!
 ”シリーズ レシピ”としてはやはり!

 ”西島”の手掛ける「大日本帝国食菜全席」の料理が気になる所・・・

 ここで何品かご紹介。
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 ”黒と白のラビリンス 孔雀肉のドルマ仕立て”
 ”深海の時へ”
 ”烏骨鶏のオデール”

 豪華絢爛過ぎて、旨そうなのかどうかさえ、分かりません。

 やはり自分は・・・
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 こちらが好きです!

 だんだん!

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